神戸学院生が阿蘇を応援するブログ

熊本地震ボランティアをきっかけに始まった取材活動

突撃インタビュー1 阿蘇とり宮さん



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店主の杉本さんと

取材原稿 大西 祐実 人文学部2年次生

 阿蘇とり宮は、商店街の中心で賑わいを見せていた。お客さんがこぞって買い求めるのは、店の看板商品「馬ロッケ」。地元が誇る馬の肉をふんだんに使ったこのコロッケは、商店街が誇る名物である。常に揚げたてを提供しており、熱々のそれは店内で食べるのもよし、商店街を歩きながら食べるのもよし。サクサクの衣の中で、ほくほくのじゃがいもに包まれているのは、濃い目に煮詰められた赤身の馬肉。本場の馬肉の旨味を存分に堪能できるこの商品は、阿蘇に住む人の舌をも唸らせる。

 

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馬ロッケ

 店主の杉本真也さんは、常に陽気だ。覇気をまとう表情、快活な笑顔や話しぶりから、この商店街を引っ張ってきた存在であると言われて納得がいく。15年ほど前、商店街を活気づけたいと第一声を上げた。それから地域づくりについて考えるため仲間同士が集まるようになり、少しずつ商店街の知名度は上昇していった。そんなある日、テレビでとり宮を特集したいという依頼が舞い込んだ。この時、おいしい湧き水を使えることや手軽であることなどを考慮し、新商品として熊本の馬肉を使ったコロッケを作ることを思いついた。毎日、何度も何度も試作を重ねるが納得がいかない。そんなとき目に留まったのが、食べかけのコンビニのおにぎりだった。肉だけを真ん中に入れてみたらどうだろう・・・コンビニおにぎりにヒントをもらい、誕生したのが馬ロッケだった。テレビ放送後の反響は非常に大きく、馬ロッケはあっという間に年間14万個を売り上げる人気商品となった。

 店の後方には、店内で提供する肉の精肉工場もできている。加工、計量、成型すべての工程を行える精肉機械への投資は1億円を超えたといい、杉本さんは背伸びした施設だと語る。衛生管理を徹底するとともに、工程の最終段階で金属探知機を通すことで、完全なる安心安全を提供できる。「作り手の顔が見えるように」。杉本さんのこだわりが垣間見えた。

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店内と外観

 杉本さんは常に前向きに、未来を考えている。2016年に発災した熊本地震を経験し、失ったものがある一方で、「これからもまだやれる」ーそんな自信を得たと杉本さんは言う。3年後、震災で倒壊した道路や橋が整備される。震災前のお客さんがまた来てくれた時に、前より新しいものを提供したい。そのために目指すことは、とり宮という名前のブランディングだ。道の駅に出品している商品をお客さんが見て、とり宮の名前に安心できる店、さらに目上の方にも手渡せる商品を作る「老舗の肉屋」を目指したいという。そして6年後に阿蘇神社が再建されたら、商店街に提灯を並べる「復興の灯」計画を提案しているという。これは神戸のルミナリエを成功例とし、光の向こうに阿蘇を観たいという思いのもとに生まれた。

 さらに、20年先まで店を続けられるように、広い視野で商売をやっていきたいと語る。「肉屋のことを知るのも肉屋、知らんのも肉屋。従業員の意見も外部の意見も大切に」。これこそが、商店街を率いてきた杉本さんの商売観だ。まさに大黒柱の貫禄だった。

 熊本に来るといつもとり宮の味を思い出す。阿蘇が誇る名店に、ぜひ一度足を運んでほしい。

阿蘇とり宮 - 熊本阿蘇一の宮のお肉屋さん 

熊本県阿蘇市一の宮町宮地3092-2

TEL0967-22-0357