突撃インタビュー4 たのや さん
取材原稿 難波ひかる 現代社会学部1年次生
阿蘇神社門前町商店街の中心部、とり宮に並ぶお菓子工房たのや。外観は町に愛されるお菓子屋さんといった感じで、おしゃれで誰もが入りやすそうな雰囲気だ。外観からまず目につくのが「たのシュー」の看板広告である。この商品は、たのや一番の人気商品かつオススメ商品だ。「たのシュー」は一般的なシュークリームに比べれば小ぶりであるが、表面には素材にこだわった質の高いアーモンドがまぶしてあり、生クリームもすっきりとした味で、ひとつでも満足感が得られる。そして、「もう1個食べたい」と思える商品になっているのだ。
店主の田野雅文さんによると以前は今ほどの観光客の賑わいもなく、一般的な地元の人が利用するのみの少し寂れた商店街であった。また、正月三が日をはじめ土日であっても閉まっている店も多くあったそうだ。しかし、観光客を呼び20年後の商店街を見据えて、盛り上げるべく「わきゃもん会」を立ち上げて町おこしが始まった。そして今では全国から視察が来るほどの成功例として挙げられる商店街になったのだ。「たのシュー」は三が日には阿蘇神社へ初詣に来るお客さんが来店し、多い時には1000個も売れるそうである。普段では多い時で土日500個程度売れている。
「たのシュー」以外にも外から見えるところに「桃子はじめました」という張り紙がある。この桃子とは「でっかい桃子」という丸ごと桃を使用したスイーツである。種をくりぬき、中心部にはクリームが入れられている。このクリームもまた甘すぎず桃自身の甘さをうまく引き立てる。桃が丸ごと1個と大きいように思えるが、実際はぺろりと食べてしまえた。この商品は夏期限定で、心待ちにするファンも多いという。
近年、お菓子職人が修行から独立するまでの期間が5年から10年と以前より短くなり、技術より情報的なものが早く伝えられ、修行をしなくても店を持てるという経営センスが大切な時代へと変わってきている。そのため「つくる」だけに特化するだけではいけない。「こだわり」と「経営面」とのバランスが難しいのだ。
さらに、コンビニ等でもスイーツが販売されておりコンビニをライバル店として挙げられていた。
それでも12月末が近づいてくる頃、お菓子屋さんにとって最も忙しくなるクリスマスケーキの販売シーズンがやってくる。田野さんは、三が日も含めた年末年始は寝る間も惜しんでつくるため、「死ぬほど忙しい」とおっしゃっていた。
田野さんは数勝負の大量生産ではなく、この通りに来た時に絶対に買うべき一品をつくりたい。そのためには地産地消が大切とおっしゃっていた。数は多くできないことがあったとしても個人で、自分が見える範囲での手作りにこだわる。自ら美味しいと思えるものを作り出し、お客さんと1対1でつながりの出来るような、美味しいものを食べて「また来よう」と思ってもらえるような商品をつくりたいという。
その中でお客さんが喜んでくれること、美味しいものをつくことの大切さに重点を置かれていた。
阿蘇神社門前町商店街を訪れることによって商店街の趣を感じ、「おいしいもの」を通して商店街の方とつながりを持ってほしい。
TEL0967-22-0255